<製造ラインを整える>
CICLOREのスチールシリーズ(Gravel & Urban)のアップデート企画は2023年にはスタートしていました、前モデルの設計上の改善点を洗い出し、更にキャラクターのカギとなるLoop Tailデザインに辿り着いた時、突き当たった壁は手の込んだ設計を実現する精度の高い工場ラインの確保でした。
製造国が中国であろうとアメリカであろうと、あるいは日本であっても自社が定めた水準をクリアする為にコストを掛け品質管理を行う事がブランドの信頼に繋がると思いますが、CICLOREを製造する工場も細かい要求や要望に真摯に向き合い製造を請け負ってくれました。しかしこれらをクリアする為には高精度な仕様に対応する製造ラインを確保する必要があり、今回コミュニケーションを深める中でフレーム造りのプロとして特別にラインを整え見事に要求に応えてくれて製造はスタートを切りました。
<細部に宿るこだわり>
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ポストマウント台座を仮止めして精度の確認を行う |
Around Gravel & Urbanのデザイン上の特徴はLoop Tailのカーブ部分にスルーアクスル+ポストマウントのディスクブレーキの台座が集中するリアエンド部分になります。そもそもLoop Tailは一本のパイプを3D的に曲げて製造するためこの加工に相当な精度が求められます、加えてパーツの組付け時にスルーアクスルとダイレクトのポストマウント台座がミリ単位以下での精度を要求してくるのでビルディングは必然的に慎重になり製造効率は悪くなります。
これらの製造効率は最終的に販売価格にも影響を及ぼす要素なのですが、その割に地味な仕様(というかマニアックな人しか気づかない仕様)となり実際に量産モデルとして採用するのか?は実は企画初期の頃に議題に上がりました。最終的にはこの見えない(見えているけど気に掛けてもらえない?)仕様を採用し理想を追求することになりましたが、完成した車体を見てこの判断は間違いでは無かったと感じています。やはり魂は細部に宿る。
<マスプロの底力>
美味しい料理を作るポイントが良い食材とその下ごしらえだとすると、フレーム作りでは良いパイプと精度の高いパイプカットがそれにあたるのかも知れません。AroundではReynolds社製パイプを採用していて素材の部分は間違い無いのですが、より肝心なのはパイプカットの精度になります。
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治具にセットされ仮止めされたAroundのフレーム |
写真は本溶接前の治具にセットされたヘッドチューブに合わせられたトップチューブとダウンチューブの接合部分です。写真を見て分かる通りパイプ同士の接合部分にわずかな隙間もなく組み合わさっています、この精度の高さは美しい仕上げの前提になるのはもちろん、もっと重要なフレーム強度と耐久性に関係するポイントとなります。
パイプカットは組み合わるパイプの曲面に合わせてカッティングされます(当然ですがそのカットするパイプの長さも指定寸法から1mmのズレも許されません)、このような正確なカットを実現するにはカッティング専用の設備を必要とし、これは設備投資のなされている量産工場の利点といえます。
そしてパイプカットだけでなく品質検査という最終的にクリアすべき課題があります。Aroundのフレームは自転車の国際安全規格として唯一の指標となるISO4210が求める安全要求事項をパスしています。これは試験機にフレームをセットし何万回、何時間と繰り返される応力や振動のテストをクリアしなければなりません。エンドユーザーが特別意識せず当たり前でなくてはならない安全性をISOテストという形で担保する、これが出来るのもマスプロ製品ならではないでしょうか。
<仕上げも重要?仕上げが重要!>
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組みあがったフレームは塗装前に丁寧に下地処理がされます |
店頭でフレームを見た時に一番印象に残るのは何でしょう?恐らくカラーリングではないでしょうか、購買動機としてスペックや価格と同等あるいはそれ以上にカラーの印象は大きいものだと思います。Around Gravelで採用しているカラーはOLD MTBからインスパイアを受けたもので発色の鮮やかさが特徴的なのですが、その塗装を美しく仕上げる為には丁寧な下地処理と仕上げが重要となります。CICLOREの製造現場では塗装の工程ごとに目視での確認が行われていて些細なムラやホコリなどが入らないように細心の注意を持って行われています。
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専用の塗装ブースで塗装が仕上げられていくフレーム |
このように全ての製造工程を整った環境の元に進めているCICLOREバイクが目指しているのはオーナーと共に多くの時間を共有できる相棒(Buddy)バイク。高い精度や安全性、高品質な塗装が時間耐性を生み出しています。
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カスタマイズされ精悍さの増したAround Gravel |
永く使えるとはその背景にしっかりとした品質が有ってこそ成立し、しっかりとした品質は製造過程で関わる全ての人の努力(情熱)とそれを支える環境が有ってこそ成立します。今回のコラムを通じてCICLOREのモノ造りの裏側に少しでも共感を頂ければモノ造りチームも嬉しく思います。